乳がんの手術後の選択肢の一つである乳房再建術。
自身の組織やインプラントを用いて、失われた乳房を取り戻す手術です。
再建手術を受けられた後も、定期的な検診は非常に大切です。
その定期検診の項目の一つに、乳がんの再発や新たな異常を発見するにマンモグラフィ検査が行われる場合があります。
今回は、自家組織再建後のマンモグラフィの適応や、巡回健診での注意点について、日本乳がん精度管理中央機構(旧:精中委)の回答をもとにまとめました。
<目次>
1.乳房再建術の種類
2.自家組織再建後のマンモグラフィは、原則不要?
3.もし、巡回健診に乳房再建後の方が来場したら、、、
1.乳房再建術の種類
乳房再建術には、自身の皮膚を移植する自家組織再建と、人工物を挿入するインプラント再建の2種類があります。
● 自家組織再建
・腹直筋皮弁法:お腹の筋肉と皮膚、脂肪を移植する方法
・穿通枝皮弁法:お腹の脂肪と皮膚を血管ごと移植する方法
・広背筋皮弁法:背中の筋肉と皮膚、脂肪を移植する方法
● インプラント再建
ティッシュ・エキスパンダーという皮膚拡張器を挿入し、徐々に皮膚を伸ばした後、シリコン製のブレスト・インプラントに入れ替える方法が一般的です。
2.自家組織再建後のマンモグラフィは、原則不要?
自身の脂肪組織などを用いた自家組織再建の場合、再建された組織に乳腺は含まれないため、基本的に乳がんが再発するリスクは低いと考えられています。
したがって、原則としてマンモグラフィや超音波検査は不要とされています。
しかし、例外的に注意が必要なケースがあります。
それは、乳腺の全摘出手術が十分に行われなかった場合です。
特に欧米人のような大きな乳房の場合、乳腺組織が周囲に土手のようにわずかに残存することがあり、その部位から乳がんが発生する可能性が否定できません。
このような可能性を考慮して、超音波検査を行うことは有効な手段と言えるでしょう。
一方、マンモグラフィ検査は、自家組織による再建乳房の遊離皮弁の血管吻合部を圧迫し、血管を損傷してしまうリスクがあるため、避けた方が良いとされています。
3.もし、巡回健診に乳房再建後の方が来場したら、、、
巡回健診のマンモグラフィ検査において「過去に乳房再建手術を受けたことがある」と申し出があった場合は、「大変恐縮ですが、本日の巡回健診では禁忌事項となっているため、医療機関での検査をお願いいたします」とお伝えするのが良いと思います。
技師の判断で勝手に撮影をして問題が発生した場合、損害賠償に発展してしまいますし、健診会社にも迷惑がかかってしまいます。
責任者に確認して、くれぐれも自己判断で検査を行わないようにしましょう。
その他のギモン
巡回健診において再建術後の乳房は撮影しても良いのか?
再建手術を受けた方は原則NG。
乳房再建手術(自家組織・インプラント問わず)を受けられた方は、原則として巡回健診での撮影は避けるべきです。
なぜなら、再建された乳房の状態はさまざまであり、巡回健診の限られた設備や人員では、万が一のトラブルに迅速かつ適切に対応できない可能性があるからです。
また、一度乳がんを経験された方は、新たに乳がんが発生するリスクを考慮すると、引き続き専門的な医療機関での経過観察した方が良いです。
乳腺を全摘しているのに、乳がんが再発することはあるの?
わずかに乳腺組織が残存している部分から再発する可能性がある。
乳腺の大部分を切除する全摘手術を行っている場合でも、ごくわずかな乳腺組織が乳輪周辺などに残っている可能性があり、そこから乳がんが再発するリスクは完全にゼロではありません。
そのため、手術後も油断することなく、定期的な医師の診察を受けることが重要です。
まとめ
乳房再建手術後のマンモグラフィ検査の必要性は、再建方法や個々の状況によって異なります。
自家組織再建の場合は原則として不要ですが、乳腺の残存の可能性などを考慮して超音波検査が行われることがあります。
巡回健診での再建乳房の撮影は、安全性の観点から推奨されていません。
定期的な検診は、専門の医療機関でフォローアップを受けるように説明しましょう。