アルバイトで交通費を精算するときは、実際にかかった金額が給与と一緒にそのまま支払われていると思います。
しかし、自分で請求書を作成するときは、交通費に含まれている「消費税」に注意しなければいけません。
この記事では、交通費の消費税に関する基本的な知識から、具体的な請求方法、注意点まで詳しく解説します。
1.交通費の消費税の基本
・交通費の消費税は原則10%
・交通費の消費税の計算方法
2.交通費の請求方法は3パターン
①支払った交通費をそのまま請求する(消費税は無視)
②交通費に含まれる消費税を内税で計算して請求
③交通費に含まれる消費税を外税で計算して請求
3.「厳密に」交通費の請求をする場合の書き方
4.交通費を請求するときの注意点
・消費税の二重請求に注意
・消費税の小数点以下の処理
・報酬に交通費が含まれていないか確認する
・インボイス制度への対応
5.まとめ
1.交通費の消費税の基本
普段、何気なく利用している電車やバスなどの交通機関ですが、その運賃には10%の消費税が含まれています。
——— 交通費の消費税率は原則10% ———
電車、バス、タクシー、高速道路料金など、一般的な交通費にはサービス料金内(人件費・燃料代など)とは別に、10%の消費税が課税されます。
運賃は内税(税込)で表示されているので、運賃が110円の場合、100円(税抜)+10円(消費税)という内訳になっています。
——— 交通費の消費税の計算方法 ———
交通費の請求には、内税(税込)と外税(税別)の2つの計算方法があります。
● 内税(税込)
交通費の総額に消費税が含まれている状態(例:電車、バス)
計算式:税抜金額=支払った交通費 ÷ 1.1
例:1000円の交通費の場合、1000円÷1.1=約909円(税抜)、消費税は約91円
● 外税(税別)
交通費の総額に消費税が加算される状態(例:タクシー、高速道路)
計算式:消費税額=税抜金額 × 0.1
例:1000円の交通費の場合、1000円 × 0.1=消費税は100円
なぜ「1.1」で割るのか?
内税の金額は、税抜金額に10%の消費税を加えたものです。
つまり、内税の金額は税抜金額の1.1倍ということになります。
内税の金額を1.1で割ることで、10%の消費税込みの金額を税抜き金額に戻します。
2.交通費の請求方法3パターン
交通費の請求方法は、主に以下の3つのパターンがあります。
どの方法で請求するかは、取引先との合意によって決まります。
① かかった交通費をそのまま請求(消費税は無視)
最もシンプルで、支払われる金額が多い方法です。
小さい会社の場合は、この方法で請求できます。
② 交通費に含まれる消費税を内税で計算して請求
公共交通機関の利用など、内税で支払った交通費を請求する場合に用います。
消費税が引かれる分、自分で支払った金額より少ない金額で請求することになります。
③ 交通費に含まれる消費税を外税で計算して請求
タクシーの利用など、外税で支払った交通費を請求する場合に用います。
消費税が引かれる分、自分で支払った金額より少ない金額で請求することになります。
大きい会社は経理処理が厳格なため、消費税を考慮した②または③の方法で請求する必要があります。
例:交通費が5000円だった場合
①は、かかった交通費をそのまま請求するので、支払われる金額は5000円。
②は、5000円 ÷ 1.1≒4545円
③は、5000-(5000円 ÷ 1.1) × 10%≒4999円
①>③>②の順に、交通費の支払われる金額が多くなります。
3.「厳密に」交通費の請求をする場合の書き方
交通費の請求方法は、利用した交通手段や取引先との契約によって異なります。
私はここまで厳密に交通費を計算していませんが、代表的なケースと請求方法、請求書の書き方を解説します。
ケース1:公共交通機関(電車、バス)を利用した場合
公共交通機関の運賃は通常、内税で支払います。
請求書には、利用区間、運賃、利用日を記載し、消費税額を内税で計算して記載します。
例:〇月〇日 〇〇線 〇〇駅~△△駅 運賃〇〇円(うち消費税〇〇円)
ケース2:タクシー、高速道路を利用した場合
タクシーや高速道路料金は通常、外税で支払います。
請求書には、利用区間、料金、利用日を記載し、消費税額を外税で計算して記載します。
例:〇月〇日 タクシー代 〇〇円(消費税〇〇円)
ケース3:自家用車を利用した場合
自家用車のガソリン代や高速道路料金は、実費を請求する場合と、会社規定の走行距離に応じた金額を請求する場合があります。
実費を請求する場合は、領収書を添付し、消費税額を計算して記載します。
会社の規定で走行距離にて請求する場合は、ガソリン代等の領収書は添付せず、走行距離と会社で定めた金額を記載します。
ケース4:出張時の宿泊費を含む場合
宿泊費は、交通費とは別に請求書を作成するのが一般的です。
宿泊費には、消費税の軽減税率(8%)が適用される場合があるので、宿泊費と交通費をまとめて請求する場合は、消費税率を分けて記載する必要があります。
4.交通費を請求するときの注意点
● 消費税の二重請求
交通費は内税なので、他の項目と単純に合算すると、消費税を二重に請求してしまうことになります。
そのため消費税を引いた金額を計算してからでないと、他の項目と合算することはできません。
● 消費税の小数点以下の処理
小数点以下の処理方法(切り捨て、切り上げ、四捨五入)は、取引先によって異なります。
消費税の計算で端数が生じた場合は、事前に取引先と処理方法を確認しておきましょう。
切り捨て:1円未満は無視
切り上げ:1円未満が存在する場合、1円にする
四捨五入:0.5円以上を1円に切り上げ、それ未満を切り捨てる
● 報酬に交通費が含まれていないか確認
契約内容によっては、報酬に交通費が含まれている場合があります。
業務委託契約を結ぶとき、日給に交通費が含まれていないか確認しましょう。
契約条項に「交通費は業務を執行する企業が負担する」と記載されていれば請求できません。
契約を結ぶときは取引先と話し合い、契約内容を十分に理解してから締結しましょう。
● インボイス制度への対応
2023年10月から開始されたインボイス制度では、適格請求書の発行・保存が求められます。
交通費の請求においても、インボイス制度に対応した請求書を作成する必要があります。
公共交通機関の特例や、3万円未満の特例など、インボイスが不要となるケースもありますので確認が必要です。
5.まとめ
交通費の請求は、消費税の計算やインボイス制度への対応など、注意すべき点がいくつかあります。
医療職のフリーランスが請求書を作成する場合は、小さい会社とのやり取りが多いので、基本的にすべての交通費はかかった金額をそのまま請求できます。
この記事を参考に、正しい知識と方法で交通費を請求し、スムーズな取引を行いましょう。